#セトコーヒー

出張カフェのスケジュールや、コーヒーにまつわること書いてます。

セトコーヒー“世界の合言葉は森!”篇 レポート

f:id:setosin:20120627142404j:plain

6月24日の日曜日。

いつもなら日曜日はカフェのバイトを

しているんだけど、

その日はお休みにした。

でもやっぱりカフェの仕事をしていた。

 

出張カフェ行ってきました。

今度は森!

街からちょっと行ったとこにある

カジュアルでロハスな森じゃなくって、

本当に森。

こってり濃厚せあぶら増し増しの森でした。

大阪市から電車を乗り継ぎ、

山間風景を車窓から眺めながら辿りついた駅から

クルマでさらに30分ほど、山に向かって走り、

森のさらに奥のもっと奥へと入っていく。

標高は400mほど。

短躯のワンボックスじゃないと

カーブをまともに曲がれないほど

細い道を、ゆく。

急な登り坂が連続し、

ドライバーはチェンジレバーを

細かく迅速に操作せねばならない。

そうして辿りついた森の一区画。

計画的に皮むき間伐という

森を元気にするための行いが

おこなわれているエリア。

きらめ樹》と呼ばれるその行いのために

集まったのは13人(たぶん)。

その行いの体験や手伝いを通して、

森の現状や活動の意味や方法を知るために

ここに来た。

一方ぼくはコーヒー淹れに来た。

よくわからない状況である。

いや、

ぼくも森を元気にする活動に

参加しに来たのだけど、

それとは別にコーヒーを淹れるのだ。

 

コーヒーを淹れる。

そして飲んでくれる人がいる。

それだけでそこはカフェになる。

いわゆるひとつのかどうかはわからないけど、

森カフェ、である。

 

   * * * *

 

椅子も、テーブルも、無い。

まわりに木が生えているだけなんだけど、

椅子もテーブルも

まわりに生えている木から作る。

今回この場所での《きらめ樹》行動の

中心となる人と、

他方からやってきた参加組の何人かは

林業を行うひとであり、

木を切り倒す技術を有する。

切り倒しても良い木を見つくろい、

チェーンソウで、切る。

木に二度刃を入れ、

りんごの芯を取り除く要領で

倒したい任意の方向に切り込みを入れ、

ロープで引っ張って倒す。

どおおおん、と大きな音を響かせて倒れた木を、

さらにチェーンソウで切る。

輪切りにしていくつかの丸太を取り出す。

それを平らな地面に並べて、

あらかじめ製材してあった板をその上に置き、

長机と長椅子の出来上がり!

休憩や飲食はここで行う。

f:id:setosin:20120705140152j:plain

 

   * * * *

 

「カードを一枚ひいてください。

 これはあなた自身を表します」

手作りのテーブルセットに掛けて、

ぼくは目の前に扇状に開かれたカードの束から

一枚を選んだ。

「なるほど……」

ぼくの前に座ったひとが、

選ばれたカードを見てうなる。

一件ふつうのおじさんだ。

恰幅の良い体にチェックのシャツが似合う

陽気なおじさん。

しかしそのひとが実は占い師で、

ぼくはこのときカード占いを行ってもらっていた。

まあ、内容に関しては、割愛します。

ところで、占い師の傍らにはコーヒーがある。

ぼくが淹れたものだ。

切り倒した木から枝を取り、

それを焚き木として、

ペンキ缶のようなものを利用して作られた

ロケットストーブという道具で

火をおこし、やかんに湯をわかす。

その間にぼくは持参した手挽きミルで

豆を挽き、

お湯がわいたらドリップポットに移して、

コーヒーの抽出を行った。

そうして淹れたコーヒーをカップに注ぎ、

提供する。

占い師さんは弁舌をふるいながら

ときおりカップをくちに運ぶ。

ある程度ぼくが診て欲しいといったことについて

語り終えてから、

ぼくのコーヒーの話になった。

「あなたのコーヒーは

 淹れられてから温度が下がっていくにつれて

 味が変化していく、

 ストーリーがあるコーヒーです」

と言われた。

おいしいです、と。

温度が変わることによって移り変わる

味の物語を楽しみながら、

ゆっくり時間をかけて飲めるコーヒー。

時間軸を味方につけたコーヒー。

そういったような言葉をいただいた。

この占い師さんは、

コーヒーを飲めば淹れたひとの体調くらいは

わかると言っていて、

妙な説得力があったし、

ぼくもコーヒー豆の成分だけではない

いろいろなものがコーヒーには宿ると

思っているくちだ。

そして、さっきまでの占いでぼくはかなり、

このひとの感性のめちゃめちゃ鋭いのを

真のあたりにしていたから、

こういう感想がすごく嬉しかった。

くすぐったいくらいだ。

 

ともあれ、

占いの結果に関しても、コーヒーに関しても、

とても良い言葉をもらえたと思う。

良い占い師さんって、

語彙が多く言葉のチョイスが巧みだからか、

診てもらったとき、

みえなかったものが少しみえるようになる

安心感とかよりも

頭の中で漠然とした印象くらいにしか

存在していなかった気持ちや考えを

整理整頓し輪郭をあたえられる爽快感があった。

ときどき、こういうのもたのしい。

でもそのときどきが

森の中だとは思わなかったなあ。

 

   * * * *

 

コーヒーはその場にいた

ひととおり皆に振る舞った。

だけどひとり、

胃をわるくしていて

ここ10年コーヒーを飲まないようにしている、

という方がいらっしゃった。

このひとは丸メガネが良く似合う

どこかの若い教授といったような風貌だった。

知的好奇心がものすごく旺盛なのが

お話やこの日の活動へ参加している

様子からもうかがえた。

ありがたいことに、

「実は胃がよわくて飲まないようにしてたんですが

 せっかくの機会なので、飲んでみます」

と言ってもらえた。

ただ、ありがたいのは間違いなけど、

体調が心配なので、

 「いや、無理しないほうがいいですよ」

と応えた。

「でもいいものを使ってちゃんと淹れたコーヒーなら

 飲めるかもしれません」

とこの方は譲らなかった。

実際おなじコーヒーであっても、

別にカフェインレスコーヒーや

水だしコーヒーじゃなくっても、

良い珈琲豆を使って、

ていねいに淹れたコーヒーは

そうでないコーヒーよりもずっと飲みやすく、

苦手なひとでもブラックで飲めたりする。

で、ぼくの淹れるコーヒーは

そういう飲みやすくておいしいコーヒーでは

ないのかどうなのかと云うと、

ぼくの淹れるコーヒーは

めちゃめちゃ飲みやすくて

むちゃくちゃおいしいコーヒー(の豆を使っている)ので、

きっとたぶん、この方でも飲めるのではないか、

と思った。

なので、淹れた。

いちおう、少し薄めで。

豆を1割減らし、挽き目をほんの少し粗くした。

あとは通常の淹れ方と同じように

真心こめてじっくりとコーヒーをおこなった。

「お待たせしました」

その方はぼくの淹れたコーヒーを

飲みほしてくれた。

それで、

「おいしいです! これなら飲めます」

だって。

「胃も大丈夫。10年ぶりですよ!」

めちゃめちゃ嬉しいじゃないか。

このときぼくは何故か冷静で、

「そうですかー、そいつは光栄ですねえ」

とか言ってたんだけど、

いま思い出すと感激してちょっと泣きそうになる。

だって、

そのひとにとっての10年ぶりのコーヒーである。

それがぼくの淹れたもので、

しかもおいしかったんだって!

それでとても興味を持ってくれたのか、

コーヒーについていろいろ質問されたり

お話したりした。

たのしい。

褒められるのたのしい。

 

   * * * *

 

木が風にゆれる音とか鳥の鳴き声とか

チェーンソウの駆動音とか

土や草の匂いとか感じながら、

コーヒー飲んだり、林業についてとか、

人工林と自然林について話たり、

花の名前や鳥の名前を教えてもらったり、

なんというか、

森に居てる、という感じだった。

森を、学び、感じた。

そういう一日だった。

 

活動を終えてから、

拠点でもある住居に集まって

参加者ひとりひとり感想などを述べていった。

多くのひとがコーヒーのことを話題に出してくれた。

もっとゆって。と思った。

というか、

林業を営んでるひとも、

山の中で自給自足してるひとも、

そういう暮らしや活動に興味があるひとも、

何も知らない状態からの参加者も、

みんな、

経験や知識の差ではない

違った目線を取り入れることで

得るものがたくさんあったようだ。

もちろんぼくにも。

得たなー。

 

   * * * *

 

夜になる前に山を下りて、

帰路につく。

ひともまばらな平日の上り電車に乗って、

同日昼間に知り合いのBAR「てんまのいえ」で

開催されていたイベントの様子を

ツイッターで確認したりなどする。

月イチ開催のそのイベントには、

前回ぼくも参加していた。

今回はどんなかんじだったろう。

ときおりスマホに落とした視線をあげると

いつのまにか夜に沈んでいた山間風景に

少しずつ街の灯りがまじりはじめている。

ふと思い立って、

そのBARに寄ることにする。

夕方までのイベントが終わって今は

通常営業している時間だ。

イベントの話を聴きたいし、

ぼくも森での体験を話したかった。

森の匂いと汗を身体に染み込ませたまま、

「てんまのいえ」へ。

f:id:setosin:20120705141551j:plain

ビールがおいしくて

ちょっとどうしようかと思った。

 

 

おわりっ!!!!