#セトコーヒー

出張カフェのスケジュールや、コーヒーにまつわること書いてます。

おでんからあふれ出すおだし以外のもの

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だいすきな鉄板焼き屋があって、

そこで飲むビールがぼくは

一番すきで、

同じ銘柄のビールを置いてる店は

いくらでもあるのに、

そこのビールを飲んでいるときは

こころのそこから幸せな気持ちに陥る。

鉄板のうえでじゅうじゅう音をならす

お好み焼きをつつきながら

いっしょにいる相手との会話も忘れて

ちょっと泣きそうになっていたりする。

おいしすぎて。

心地良すぎて。

こういうお店があるから

一週間生きていられるっていうひとは

きっとたくさんいるんだろうな。

 

その鉄板焼き屋は

お好み焼きや焼きそば、それから一品ものも

めちゃめちゃおいしい。

下町の一角にあるそれほど大きくないお店で

店主さんやスタッフさんも感じがよくて

居心地が良い。

だいいち鉄板焼き屋って、

クーラー効いてても鉄板の熱で

常にのどがかわく。

とか、そういった理由で、

ここのビールはうまいっ!

のだと思っていたけど、

それは表層的な理由にすぎなくて、

こないだこのお店で呑んだとき、

休日の夜だったから

お客といえばぼくのグループだけだった。

そこへ店主さんの奥さんが来店して、

ぼくたちは奥まった席にいたから

店主さんと奥さんが

普段使いの言葉で会話をしはじめて、

大きくない店だから、

話声はきこえてくる。

その店にはおでんも置いているのだけど、

その、おでんについて話してて、

どうやらおでんは、

仕込みがけっこう大変なわりに

あまり売れないらしい。

でも店主さんは

おでんに強いこだわりを持っているようだった。

「全然売れなくてもおでんはやめへん」

そうはっきり言っていた。

「おでんは、愛や」

と。

それでここのビールがなんでおいしいのか

ぼくはわかった。

ぼくも、

「コーヒーは、浪漫ですよ」

とか言ってるのでわかった。

 

愛、とか、愛情。

情熱。

気持ち。

誠意。

それから浪漫。

商売のうえでそういうものの価値を

信じているのにちがいない。

 

根っこにそういうものがあるから、

この店は居心地がいいのだろう。

だから、こころがほどけて

鉄板焼きの匂いとビールが

からだに染み込んでいくんだろう。

 

気持ちは伝播するものじゃないですか。

たのしい輪の中にはいれば楽しいし、

ひとの愚痴をきいてると疲れてくる。

ちいさい個人店で、

そこの店主さんやそこで働くスタッフさんが

料理をつくる。

その手でビールを注ぐ。

そして目の前に置かれる。

その距離はとてもちかくて、

そこにどういう気持ちがあるかというのは

油断ならないくらい簡単に伝わってしまう。

だからもし、そこに、

愛情がこもってれば、

それはおいしいに決まっている。

同じ銘柄のビールでも

しあわせになれるに決まっている。

 

いや、気持ち、だいじだな。

どんなに余裕なくても

気持ちを込めてコーヒー淹れなきゃな。

と鉄板焼き屋できこえてきたおでんの話で

思ったのでした。

 

だから、どこかのカフェやごはん屋に行ったとき、

また誰かに料理を作ってもらったとき、

でてきたものをくちに入れて、

おいしいだけじゃなくって、

うわ、なにこれやば、なんかたまらない、

うわあなんかいましあわせ

と思ったら、

でもその正体がわからなかったら、

それは愛です。

 

ところでぼくは

コーヒーには気持ちがこもる、

気持ちで味が変わると信じていますが

そういえば淹れてるときいつも

何も考えていないので

ちょっとどうかなと思う。